病気と治療について

関節リウマチ

【関節リウマチとは】

関節リウマチ(以下RA)は、手関節・手指をはじめ肘や肩関節、膝関節、足関節、足趾、頚椎などを中心にその多くは左右対称性に痛みや腫脹、発熱を呈する疾患です。 病変の主座は骨そのものではなく関節周囲に存在する滑膜の炎症です。有病率は人口の約1%で、人種差や地域差はありません。好発年齢は30〜50歳代で、 男女比は約1:3〜5ですが、高齢者では男性の増加がみられます。膠原病の中ではRAは圧倒的に多く、わが国では約80万人の方が罹患しています。

原因

根本的な病因はいまだ不明ですが、
多発家系の存在
一卵性双生児の一致率(25〜35%前後で二卵性の7%に比し高い)
HLA- DR4の陽性(日本人のRA患者の60〜70%が陽性)
などの所見から遺伝的要因、性ホルモンや環境的要因など(ウイルス感染症など)単一ではなく複数の原因が重なったときに発症すると考えられています。 リウマチ因子(RF)などの自己抗体の存在、関節滑膜への活性化されたマクロファージやCD4陽性T細胞の浸潤、炎症物質である様々なサイトカインの産生など、 免疫異常の関与は多くの症例で見られ、これらが関節組織の破壊や滑膜の増殖にかかわっていることが明らかとなっています。

症状

症状としては大きく関節症状と関節外症状に分類されます。
a)関節症状
関節炎は多発、対称性にみられ、時に移動性で、手指、手首、足趾などの小関節炎がRAに特徴的です。 しかし手指尖端(第一関節)関節症状は変形性関節症などに多くRAでは稀です。関節炎の持続により炎症が強い場合は変形を生じます。 手指が外側に変形する尺側偏位やスワンネック変形など特徴的な変形を示すことがあります。足趾では外反母趾などもみられるようになります。 長期的には関節の疼痛は軽減してくるものの、手指などの支持組織が消失してしまう状態に至ることもあります。
また、第一・第二頸椎のずれ(亜脱臼)が生じると、手指のしびれ、動きの悪さなど知覚障害や運動麻痺といった脊髄圧迫症状を認めることもあります。
b)関節外症状
  関節以外の症状として、皮膚ではリウマチ結節や皮膚潰瘍を認めることがあります。 上強膜炎、虹彩炎などの眼症状、心膜炎や心筋障害、胸膜炎、間質性肺炎・肺線維症(時に薬剤による影響として出現)など心臓や肺に病変が生じることもあります。 頻度は高くありませんが、蛋白尿や糸球体腎炎などの腎病変、吸収不良症候群など消化管に病変がおよぶこともあります。 このことから、RAの治療は関節のみに着目するのではなく、常に全身の合併症の出現に注意を払うことが必要となります。

シェーグレン症候群

【シェーグレン症候群とは】
主に涙や唾液などの分泌組織に慢性の炎症がみられ、これらの分泌が低下する疾患です。他の膠原病に合併しない一次性のものと、 関節リウマチや強皮症、全身性エリテマトーデスなど、他の膠原病に合併する二次性のものがあります。 有病率は約10万人当たり25人で男女比は1:13.7と女性に多く見られます。

原因
遺伝的素因と環境要因(ウイルス感染など)が指摘されていますが、明らかな原因はわかっておりません。

症状
70〜90%の症例で粘液の分泌低下により以下のような乾燥症状を認めます。

目がごろごろする、ごみが入った感じ、まぶしくて目が開けられない、目やにが出る、口が渇く、尿の回数が多い、パンやビスケットなど、 水分の少ない食物を水がないと飲み込めない、虫歯が多い、口角炎・口内炎を起こしやすい、鼻が乾く、中耳炎を起こしやすい、胃酸が少なく胃が荒れやすくなる、 皮膚が乾燥する、膣の分泌が少なくなるなどの局所症状と発熱、関節炎、リンパ節や耳下腺が腫れる、レイノー症状、紫斑などの全身症状が見られることがあります。 さらに間質性腎炎、間質性肺炎、肝機能異常、甲状腺機能低下症、悪性リンパ腫などを併発することもあります。

全身性エリテマトーデス

【全身性エリテマトーデスとは】
 全身の臓器(皮膚・粘膜・関節・腎・脳・心血管・肺・消化器・血液など)に多彩な自己免疫応答を引き起こす炎症性疾患で、 寛解と増悪を繰り返しながら慢性の経過をたどることが多い疾患です。異常な免疫応答を起こす臓器によりそれぞれ特徴的な症状が出現します。 この疾患に特徴的な皮膚症状に蝶形紅斑や円板状皮疹があげられます。ループス腎炎や中枢神経ループスなど重大な臓器合併症が見られることもあります。

原因
原因は今のところ不明ですが、免疫異常が感染やホルモンバランスの障害、強度の紫外線、薬剤アレルギー、外科手術や外傷、妊娠、出産などの身体的ストレスなどの 要因が加わることによって免疫異常が誘発されると推測されています。
発病率は10〜100/10万人程度ですが、SLE近親者で0.4〜5%と発病率がやや上昇すると言われており、なんらかの遺伝的要因も関与している可能性があります。 男女比は1:10.9であり、特に20〜40歳代の女性に多い傾向があることが特徴です。

症状
[全身症状]
発熱や全身倦怠感、関節痛など一般的な炎症症状のみで特徴的な症状はありません。
[皮膚・粘膜症状]
顔面の蝶形紅斑やディスコイド疹と呼ばれる皮疹も、この疾患に特徴的です。さらに日光過敏症や頭髪、眉毛の脱毛、口内炎や口腔内潰瘍を認めることがあります。
[関節症状]
全経過中に95%以上の症例で関節痛や関節炎が見られます。
[腎症状]
自己免疫反応を起こした免疫複合体が腎臓に沈着することにより腎炎を引き起こす症例も見られます。 この疾患に特徴的な腎病変は「ループス腎炎」と呼ばれ、腎臓の不要物濾過機能が低下すると、大量の尿蛋白や細胞が出現しネフローゼ症候群を呈することもあります。
[脳(中枢神経症状)]
細胞にも異常な免疫反応がみられることがあります。炎症部位によってせん妄や抑うつ、感情障害麻痺、感覚障害、けいれん、頭痛など様々な症状が出現する可能性があります。 早期診断、早期治療が非常に重要となります。
[心血管、肺症状]
心臓や肺を包み込んでいる漿膜と呼ばれる膜に炎症が広がると、胸の痛みや動悸・息切、咳などの症状を起こすことがあります。 さらに間質性肺炎や肺高血圧症も高頻度ではありませんが注意を要する病変です。
[消化器症状]
小腸、大腸に病変が生じることもありループス腸炎と呼ばれます。腹痛、嘔吐、下痢などを自覚することがあります。
[血液症状]
貧血、白血球・リンパ球減少、血小板減少、抗リン脂質抗体症候群といった症状がみられます。そのほとんどが血球に対し自己抗体が産生され破壊されてしまうことが原因です。

抗リン脂質抗体症候群

【抗リン脂質抗体症候群とは】
  抗リン脂質抗体症候群は、主に血液の凝固機能に関連する蛋白に異常な免疫応答がみられる疾患で、 血液が固まりやすくなり血管内で血栓が形成され、血行障害による様々な症状が出現する疾患です。 代表的な自己抗体は抗リン脂質抗体の一つである抗カルジオリピン抗体であり、この疾患の半数は全身性エリテマトーデスをはじめとした 他の膠原病にも合併することがあり注意が必要です。

原因
はっきりとした原因は不明です。家族内発症が高率であることなども証明されていません。

症状
体内のいずれの血管においても血栓ができる可能性があり、血栓ができた場所によりその症状は異なります。 下肢の静脈に血栓ができた場合は再発性の下肢の腫脹と疼痛が多く起こります。脳の血液の流れが障害されると、片頭痛、てんかんなどの症状がみられることがあり、 更に若年性脳梗塞をきたすこともあります。  肺や心臓の血管に血栓ができた場合は呼吸困難,胸痛を認め、皮膚や眼などの小血管の血行障害では皮膚潰瘍や視力障害も引き起こすことがあります。 女性に発病した場合、流産を繰り返すことが多くみられ習慣流産を契機にこの疾患が発見されることもまれではありません。 血液検査では、血小板減少や血液の凝固機能を反映するAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長, 抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラント陽性などの検査結果が重要な所見となります。

強皮症(全身性硬化症)、クレスト症候群

【全身性強皮症とは】
皮膚硬化を主症状として、内臓の硬化病変や血流障害を呈する結合組織疾患です。 分類として、皮膚硬化が広い範囲に及ぶ広汎性全身性強皮症と、四肢の末端に限局する限局性全身性強皮症に分けられます。 血清中には高頻度に核蛋白に対する自己抗体が検出されます。

原因
遺伝的素因に環境因子が重なることにより発症しますが、明らかな原因はいまだ不明です。

症状
慢性的な自己免疫反応による炎症を繰り返すことにより皮膚および内臓諸臓器に線維化、血流傷害がみられ様々な臓器に多彩な症状が見られます。
寒冷刺激で手指末端が白色に変化するレイノー現象を初発症状とすることが多くみられます。 手指の腫れや、顔、四肢、体の掻痒感やつっぱり感を伴うことがあります。 石灰化、レイノー現象、食道病変、毛細血管の拡張などをともない特徴的な臨床症状が見られる場合はクレスト症候群と呼ばれますが、 皮膚硬化の限局した限局型強皮症の一部であると考えられております。臓器合併症
[肺]
代表的な肺病変として、間質性肺疾患と肺高血圧症があります。 両者は基本的には独立した病態ですが、多くの例で併存することがあります。症状としては、労作時の呼吸困難や疲労、胸痛、意識消失発作などです。
[消化管]
上部消化管病変として、逆流性食道炎や食道狭窄による嚥下困難を認めます。 下部消化管に病変がおよぶと下痢や蠕動運動低下を来たし腸腹部膨満感を自覚することがあります。
[腎臓]
強皮症腎クリーゼと呼ばれる高血圧を伴う腎障害と、正常血圧の腎障害があります。
[心臓]
線維化による心室拡張障害や不整脈、炎症による心膜炎を併発することもあります。
[血管]
末梢の血流障害のため、爪上皮出血点や毛細血管拡張、指尖部の虫喰状瘢痕、潰瘍、壊疽などの症状を認めます。 線維化による心室拡張障害や不整脈、炎症による心膜炎を併発することもあります。

皮膚筋炎・多発性筋炎

【皮膚筋炎・多発性筋炎とは】
全身の筋肉に異常な免疫反応が生じ、筋力低下や筋肉痛などをきたす病気です。 皮膚筋炎は顔面や手背などに皮疹を伴う筋炎です。有病率は人口10万人あたり5〜8人、年間発症率は人口100万人あたり2〜5人と推定されています。
 症年齢は5〜14歳と45〜64歳にピークがあります。また、男女比は1:1.5〜2.0と女性に多いですが、小児では性差はありません。 とくに皮膚筋炎では内臓に悪性腫瘍を伴うことがあるため、全身の検査が必要になります。

病因
明らかな原因は分かっていませんが、遺伝的素因に加え、何らかの環境因子(感染症、日光暴露)により誘発される自己免疫現象による筋障害が想定されています。 前述のとおり、悪性腫瘍は筋炎の病因として考えられ、他の膠原病と同様、薬剤により誘発された例も報告されています。

症状
全身の症状として発熱、倦怠感、脱力感、体重減少、関節痛、レイノー症状がみられることがあります。 筋症状としては腕や肩、大腿などの、体の中心に近い筋肉が障害されることが多く、筋肉痛や筋力低下を生じてきます。 また、嚥下筋(物を飲み込む時に使用する筋肉)の障害を生じ、飲み込みにくさ、むせるなどの症状を呈することもあります。 皮膚筋炎の場合、上眼瞼の腫れを伴う紫斑(ヘリオトロープ疹)、関節背部の紅斑(ゴットロン徴候)がみられます。
間質性肺炎をはじめとした臓器合併症が高率にみられます。特に本疾患に併発した間質性肺炎は急速に進行し治療抵抗性である例も見られ注意が必要となります。